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続 「大浮世絵展」  

浮世絵の「さらなる展開」

喜多川歌麿、東洲斎写楽というスター浮世絵師の活躍したあと浮世絵はさらなる展開を見せる。
色彩は華美となり、描写は誇張や歪曲が目立つようになってくる。

描かれる対象も役者絵と美人画に、風景画が第三のジャンルとして加わり、さらに花鳥画・戯画・
歴史画・武者絵などと広がってゆく。

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葛飾北斎  富嶽三十六景  「神奈川沖浪裏」 天保2年(1831)頃   ギメ東洋美術館

幕末の浮世絵師で傑出した存在感を示すのは葛飾北斎(1760-1849)
錦絵以上に版元の挿絵、摺物、肉筆画など幅広い活躍を見せた。
北斎芸術の特筆である巧みな構図や圧倒的なデッサン力は、西洋の芸術家達にも強い影響を
与えている。

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葛飾北斎  富嶽三十六景 「凱風快晴」  天保2年(1831)頃   和泉市久保記念美術館
東京都江戸東京博物館、ベルリン国立アジア美術館
「凱風」とは南風、初夏のそよ風のこと。 年に何度か富士が見事な朝焼けに染まることがあるという。
黒い山肌が闇の中から次第にその輪郭を明らかにし、赤く染まったその瞬間を描くものである。

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葛飾北斎  富嶽三十六景 「山下白雨」    ベルリン国立アジア美術館

「白雨」とは夕立のこと。まばゆい稲妻が一気に下界へと駆け抜ける。 垂れ込めた黒い雲の下は、
突然の夕立だが、雲の上は一転して明るい世界が広がる。
富士は下界の騒ぎをよそにそびえ立っている。

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葛飾北斎  富嶽三十六景  「尾州不二見原」    ベルリン国立アジア美術館

「富嶽三十六景」の連作で、北斎はさまざまな計略を富士山に仕掛け、それを楽しんでいるようでもある。
製作半ばの桶の作る大きな円の中から小さく富士山を覗き見るという本図の設定は、アイデアマン
北斎らしいものである。

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葛飾北斎  「紫陽花に燕」   ベルリン国立アジア美術館

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葛飾北斎  「百合」   ベルリン国立アジア美術館

横大判の花鳥図は、出品作を含め10図が知られている。「冨獄三十六景」などと
同じ時期の作品。
北斎が風景版画ばかりでなく花鳥版画の分野でも同様の質高い作品を生み出して
いたことを示す作品。

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葛飾北斎  百物語のうち 「さらやしき」と「笑ひはんにゃ」  日本浮世絵博物館

百物語とは怪談のこと、夏の夜に人々が集い、灯明や蝋燭を100本立てて怪談をし、1話終わるごとに
火を消して、すべてが消えた時に怪異が起こるというものであり、江戸時代後半に流行した。
北斎の「百物語」は、これをタイトルとして怪談を絵画化したもの。(現存するのは出品の5種類)

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葛飾北斎  「夏の朝」 文化(1804-18)前期  岡田美術館

左手に鏡を持ち、右手で髪を整える女性を後方45度からとらえた図です。
手前の朝顔が浮かぶ鉢の脇には房楊枝があり、女性の向こう側には
金魚の泳ぐ鉢も見える。
夏の朝、女性が身支度にかかろうとする時間帯であることを示す、趣味の良い
演出が加えられた、北斎40代後半の肉筆美人画の傑作である。

 

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歌川広重  東海道五十三次之内 「日本橋 朝之景」天保4年(1833)頃  東京都江戸東京博物館
名古屋市博物館

広重が始めて東海道を描いた全55枚のシリーズ、彼を名所絵の名手として決定づけた代表作でも
あり、街道絵の決定版といえる作品である。その1図が、東海道の起点である江戸日本橋の
早朝風景から始まる。

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「箱根 湖水図」  東京都江戸東京博物館 名古屋市博物館

箱根は江戸方面から数えて10番目の宿場、険しい山道に加え関所を通らなければならないので、
東海道隋一の難所とされる。  山道に大名行列が描かれている。
広重は名だたる箱根の山々の険しさを色とりどりの露出した岩を積み重ねることで表現している。

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「蒲原 夜の雪」  名古屋市博物館   東京都江戸東京博物館  中山道広重美術館

しんしんと降り積もる雪に埋もれた家、その手前を足元に注意しながらゆっくりと歩む人々。
しっとりと闇に沈んでいく雪夜の哀感を表現した傑作。 蒲原(現;静岡市)は江戸から15番目の
宿場であり、めったに雪は降らない温暖な地域であるが、広重はシリーズに変化をつけるために、
雪景色を描いたのではないかと考えられている。

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歌川広重  「庄野 白雨」  江戸東京博物館 中仙道広重美術館 名古屋市博物館

副題の「白雨」は夕立のこと。ざぁっと降りだした雨に慌てて駆け出す人々を描く、駕籠の覆いが風で
めくれ上がり、揺れに耐える乗客のこぶしがのぞく。
坂を駆け下りる男の傘には「竹のうち」「五十三次」との文字が摺りこまれ、当シリーズ名と版元を
宣伝する。
庄野は江戸から45番目の宿場であり現在の三重県鈴鹿市にあたる。
夕立の劇的な一瞬をとらえた傑作。

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歌川広重  「鞠子 名物茶屋」    名古屋市博物館

鞠子(現;静岡市)は東海道20番目の宿場。麦飯にとろろをかけたとろろ汁が名物で、今も同地で
味わうことが出来る。
茶屋には「御茶漬」「酒さかな」とともに「名ぶつ とろろ汁」の看板が掲げられている。

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歌川広重  木曽街道六十九次之図  「洗馬(せば)」   中山道広重美術館

洗馬は江戸から31番目の宿場、(現;長野県塩尻市) かすかに夕焼けが残る空に満月が昇りかけた
頃合の奈良井川であろうか。
シリーズ中でもひときは広重画の特質である叙情性を伝えてくれる名作である。

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歌川広重  「四拾七 大井」   中山道広重美術館

大井は46番目の宿場で、現在の岐阜県恵那市にあたる。  雪が降りしきる山中を進む一行を
正面から描いたもの。
寒さに耐え忍びながら一歩一歩と先へと進む、冬の旅の厳しさと侘しさを表した作品。

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歌川広重  名所江戸百景  「大はしあたけの夕立」  安政4年(1857)
高浜市やきものの里かわら美術館

「名所江戸百景」は広重最晩年を代表する江戸名所絵シリーズ。
本図はシリーズ中最も知られた1枚。描かれているのは隅田川に架かる新大橋
(現;東京都中央区)作品名中の「安宅」(あたけ)は対岸の御船蔵あたりの通称。
構図の妙と彫り・摺りの技術が合致した本シリーズの最高傑作といえよう。
本図もヴィンセント・ファン・ゴッホが油絵で模写している。

 

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歌川広重 名所江戸百景「亀戸天神境内」 高浜市やきもの里かわら美術館

亀戸天神社(現;東京都江東区)は太宰府天満宮を模して造営された社殿や
池、太鼓橋があり、藤の名所としてよく知られていた。
(現在も太鼓橋と藤の花は亀戸天神社のシンボルです、ちょうど今頃藤の花は
満開を向かえ賑わっています)

 

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葛飾応為(おうい) 「夜桜図」 メナード美術館

灯籠の灯りを頼りに一考する女性の姿です。
北斎の三女応為(生没年不詳)と思われる、絵の
実力も父親譲りで、北斎が美人画は自分より
うまいと褒めているほどである。
(北斎が娘をいつも”おーい、おーい”と呼んでいたので
この名前になったと読んだことがあります)

 

新たなるステージへ

長く続いた江戸時代が終わりを迎え、1868年に元号が明治となった。
時代の転換期に、それまでは主に都市・江戸の平和な諸相を描いてきた
浮世絵にも、さまざまな変化が現れてきた。

歴史画や美人画なども含めて幅広い画題に取り組んだ月岡芳年の活躍は
目を引く。

 

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月岡芳年 風俗三十二相「けむさう」亨和年間内室の風俗 江戸東京博物館
明治21年(1888)

女性の上半身を描いた32枚揃いの作品のうちの一枚、芳年晩年の美人画の
代表作であると同時に、当時の美人画を代表するもの。

 

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橋口五葉  「化粧の女」 木版 大正7年(1918) 渡辺木版美術画舗

狩野派、洋画と学び、ポスターや挿絵で活躍したあと、五葉が関心を
寄せたのが浮世絵であった。
五葉自ら彫師と摺師を抱えて製作した私家版の美人画の一つ。

 

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川瀬巴水(かわせはすい)東京十二題 「春のあたごやま」 江戸東京博物館

(近くに住んでいた愛宕山が懐かしい、現在も桜が見られます)

 

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川瀬巴水  東京二十景  「芝増上寺」 大正14年  江戸東京博物館

愛宕山からも近い増上寺の三解脱門の前を和傘をさして歩く和装の女性を
描く。

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川瀬巴水  「日本橋(夜明け)」  昭和15年(1940) 江戸東京美術館

夜明けの薄もやの残る日本橋を描く。
江戸の日本橋を描く代表が、歌川広重の「東海道五十三次之内 日本橋
朝の景」とすれば、近代の日本橋を描く第1作として本作が上げられます。

明治44年(1911)架橋された石の橋を、縦長の画面に格式高く爽やかに
描き出しています。

 

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川瀬巴水  「平泉金色堂」  木版 昭和32年 渡邉木版美術画舗

川瀬巴水最後の作品。  奥州藤原氏4大の栄華を物語る遺構のひとつ。
雪は深く険しく、ただ一人歩みを進める僧侶の姿は、版画の道をひたすら
歩んだ巴水その人の姿と重ね合わせられる。

巴水は本作品の完成を見ることなく昭和32年11月27日逝去した。
巴水百か日の法要にて、完成作の発摺りが関係者に配布されました。

 

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衰退を余儀なくされた浮世絵の伝統をよみがえらせた「新版画」は浮世絵と
同様、絵師・彫師・摺師を分業とした木版画で、大正4年に橋口五葉の製作が
開始された以後美人画の名手・伊東深水、個性的な役者を描いた山村耕花、
そして東京をはじめ日本各地の風景を残した川瀬巴水らが登場し、
新たなるステージが幕を開けた。

 

「大浮世絵展」図録から写真、解説を掲載させていただきました。

 

コメント

  1. shinakoji より:

    2回にわたり長くなりました、ご覧頂きありがとうございます。
    素晴らしかった浮世絵の数々、写真で見慣れたものも多かったですが、
    外国の美術館所有が多いのにも驚きました。

  2. 雲母舟 より:

    しなこじさん

    おはようございます!

    精力的にいろいろなところに行かれていて感服です。
    浮世絵展の解説も丁寧にしてくださり、勉強になります。
    私は、川瀬巴水  東京二十景  「芝増上寺」の構図に
    いたく感じ入りました。
    素敵ですね~。

    銀座神谷は私も外国から客人が来たときや
    家族の記念日などでたまに使いますよ。

    御苑の桜、見せていただきました。
    豪華ですね。 

    • shinakoji より:

      雲母舟さん
      ありがとうございます。京都の桜を見せていただきました。
      いつも素敵な写真にうっとりです。
      浮世絵は好きなのでつい長くなってしまいました。
      銀座神谷せっかくなのにひどい写真になってしまい反省しています。
      写真展でお目にかかれるのを楽しみにしています。

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